インタビュー / 星川洋嗣

修行時代が終わってから、
やっと表現について考え出しました

 

 

星川さんが写真に携わることになった経緯を教えてください。

 星川:きっかけは母親だと思います。サッカーをやっていたので、その写真を撮るのに母親が一眼レフを買って家に置いていました。高一でサッカーをやめて、大学に行くかどうしようかって考えてるときに、元々絵とか字をかくのが好きで…。

字っていうのは書道ですか?

 そう。それでなにか美術に関わることはしたいなぁって思っていて、「自分になにができるだろうかなぁ。カメラマンってカッコイイな」で写真を志しました。

カメラマンという選択肢はすぐに発想できましたか?

 そのころは報道、キャパやブレッソンの写真集が、書店に普通に置かれていて、 それでカメラマンって報道の職業なんだって思ってました。それから自分で調べたりして商業写真のカメラマンの方に仕事を手伝わせてもらったり、仕事場を見せてもらったりしました。デパートで七五三の記念撮影とか大阪の会議場を仕事で撮ったり。
 その人が現像してるのを見て面白いと思って、その後実家の台所で暗室を作って友達と現像したり……高2・高3のときです。物事を覚えるのが好きだったんで、工程も覚えたいと思って。 

そのころから写真を誰かに見せることはありましたか?

 友達にあげたりしましたね。

その後、どのような転機が訪れたのでしょうか?

 僕は今のベースが商業カメラマンで、表現云々以前に、本気で写真で使ってメシを食うとすれば、会社に三年くらい勤めてからだろうなって考えていました。それが22歳の時。その頃は、写真は自分を表現するものだという感覚は全く無かったですね。

会社ではどのようなお仕事をされているのですか?

 撮影アシスタントです。それから、自分で撮るようになり、オーダーに応えられるようになり、さらに仕事が来るようになって、撮影の時に自分の意見が言えるようになり…。そうなって初めて「これでメシ食っていこう」って決めましたね。’03年 ~ ’04年頃です。

その時点から今に至るまでに何か変化しましたか?

 職業としての感覚も当然だけど、特に表現するという行為に意識が向くようになった。何が好きなのか嫌いなのかとか……。
工程や技術を覚え込んだり、要求されたことに徹底的に応えるっていう修行時代が終わってから、やっと表現について考え出しました。


2011.6.6「開かれた写真集会議」より

撮るための前後の言葉、その周囲の言葉

 カメラに興味が湧く以前から「表現したい」という考えはありましたか?

 表現というか、コミュニケーションの可能性というのは間違いなく感じていました。言葉じゃないもうひとつのツールとして写真を見ていて、商業写真も同じです。

興味深いですね。

 そこを勘違いしている人は多いと思います。カメラで撮る人は人ととコミュニケーションしてるから、現場ではもちろん、それ以外でも。そういうことが見えてきて今の仕事を続けてるんだろうし、仕事の撮影をやっぱり面白いと思ってやっています。

「コミュニケーション」と聞くと、まず「言葉」が思い浮かびます。何かを考える際には一番に言葉で考えますし、そこについてはいかがでしょうか? 写真だけでなく言葉について考えることは?

 ”この一枚”を撮るための前後の言葉、その周囲の言葉があります。写真と言葉と、撮る時は両方大事ですね。
 広告写真って何かを伝達していて、誰かがいなくてもそれが伝わる。広告はそこを狙っていて、「これはこうなんだ」って思わせることが重要なんです。でも、見る側に生じる言葉ってのは、当然だって一蹴されるようなものかもしれないし、もしかしたら一言すら発せられないことだってある。
 機能を説明するための写真なら、見た人が「これはこうやって使うんだ」っていうので終わるだろうけど、そうじゃなくて。「かっこいい」「きれい」「ふしぎ」とかいう言葉が、撮ったあとで重要になってくる言葉だと思います。

驚きに近いのでしょうか?

 どういう言葉を発するだろうということに関して、僕は言葉に興味があるって言えるんだと思います。撮る前の管理できる言葉と、見られる時の管理できない言葉があって、その2つに挟まれています。

hoshikawa
写真会議録BRAINSTORMINGvo.1
「人間」より



 

 

撮ること自体は変わりません

BRAINSTORMINGについてお話を伺わせて下さい。

 「ブレスト」みたいなものを作ってみたいとは思っていました。新しいかどうかは分からないけど、全員が同じ世代で、ずっと写真と関わってきた人間が何か1つのお題について色々やったらどうなるのかな、っていうのはやってみたかったことなんです。紙にして人の目につくようにすることは一体どんなものか、経験してみないとわからないので。

星川さんご自身でもZINEを作っています、普段の仕事とは考えることが異なってきますか?

それはそうです。好きな事なら勝手にやるし、ただ考えたかったら自分ひとりでやってるだろうし……僕はこれ(BrainStorming)に乗っかっている感じがあります。

 BRAINSTORMING vol.1「人間」に掲載されたご自身の作品について教えて頂けますか?

 とにかくモノクロがやりたかった。これは完全に僕の好き嫌いの問題なんですけど。

掲載されたイメージの多くは、被写体が何であるかを特定しづらい状態です。

 自分が生活しているなかで、人間ということを考えるにあたって、重要だと思ったのは”つながり”というか、人間を感じられる場所、人を集まりとして感じられる場所でした。

それは、人を感じられる場所という意味でしょうか?実際、その場に臨んでの人はどうでした?

 撮ってる時は考えなかったけど、セレクトしてる段階で色々感じました。ここは居心地わるかったな、とか。
あと単純に綺麗な所もありましたね、そう思うのも人間だな、とか……やっぱり撮りたかったから撮ったのが一番大きいです。

“人間”というテーマを与えられて、気づかれた事や新しく試みた事はありますか?

 セレクトの仕方を自分用に変えました。あと、人間っていうテーマに沿って撮影・セレクトするって言うことが新鮮でしたね。何かテーマに沿ってするっていうことは一々新しいことだと思うけど、撮ること自体は変わりませんね。ずっとやってきたことですし。

新しい組み方はどのように作用しましたか?

 新しいと言いつつ、結局変わらなかったなぁって実感しました。

 

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星川 洋嗣 / HOSHIKAWA Hirotsugu

1981年生まれ。幼少期はサッカーにあけくれる。
2001年 広告写真制作会社入社。現在に至る。
2010年 APAアワード 写真作品部門 金丸重嶺賞受賞
2010年 香港国際ポスタートリエンナーレ 2010 金賞/ KAN Tai-Keung賞
http://www.pointer-e.com/

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11.05 BRAINSTORMING 星川 洋嗣インタビュー

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