インタビュー / 福井 馨 

被写体のパワー

vol.1「人間」の掲載作品について教えてください。

福井:私はこの”hallo petty”に出会うまでドラッグクイーンを見たことがなかったんです。こんな楽しいことをする人達がいるんだと。皆、百均で材料を買って丁寧にコスチュームを作って、お金を少しかけて凄く楽しそうに、レストランでクラブでショーをする。みんな格好よくて、何よりおしゃれなんです。なんとも化粧している姿が真剣で魅力的。

 だから最初は、化粧しているところを撮影して写真集作ろうと思ったんですよ。でも長く彼等を見ていると、やはりショーになると人が変わったように良い表情になるし、衣装も素敵だし、そこも合わせて載せようと撮影しながら思いました。

福井さんが演劇を勉強されていたことは関係しますか?

 そうかも。好きなんですね。ショーとか、舞台とか、派手な物や、笑いとかも。

日常と乖離したおもしろさということでしょうか?

 そういった夢のような作られた時間も好きだから、彼らと相性が合ったんでしょうね。本来の姿と、演じる最中と、演じ終えた時。その間の中間地点みたいなところにいる感じの人も好きです。

今回の作品構成についてですが、6つのイメージ(全8ページ)で構成され、写っている方が「ドラッグクイーン」では無い状態「off」、「無防備」な状態からスタートし、その後4つ目の写真、丁度真ん中からドラッグクイーンとなり「on」の状態に展開されていきますね。

 この枚数の中では、やはり流れが必要だと思ったのです。8ページで出来ること。更にはインパクトがいると思って。写真一枚一枚の力を、分散させて納めることを考えました。

今回モノクロとカラーが混在しているのはブレストの形態が関係しているのでしょうか?

 そうですね。バランスもあったのですが、イメージによってはモノクロにした方がリズムが出て楽しめるかと。インパクトとリズムを大切に考えました。


BRAINSTORMING vol.1「人間」より

自分の撮った写真を操作できる

写真に触れた最初の体験を少し教えて頂けますか?

 私はもともと美術大学で演劇をやっていたのですが、大学で写真の授業があり、人を撮ることも好きで、写真をやってみようと。演劇もおもしろかったんですが、演じてる役者を冷静に見てしまう事に気づいて、これは役者では難しいかなと思い、自分一人で判断して作りしたいと思い、写真に転向しました。
 今は、全部デジタルなんで暗室には入らないんですけど、暗室に一人で長時間入っているのがとにかく好きでした。

役者というと明るい場に出て行く印象があり、暗室作業があまり想像しにくいのですが、演劇と写真は何か関係があるのでしょうか?

 演劇も役をもらって、一人で役をねじ込んでいくという部分があります。表に、舞台に出ている時間がある中で、そうじゃなくて自分というものについて考える時間が欲しかった。   
 でも、演劇の達成感は瞬間だったりするけど、写真の達成感は瞬間じゃないし、時間がかかるものかなって気がします。大袈裟に言えば、人生かけて何か作りたい、って思いました。

当時、先生から誘われて参加された個展で「展示」の面白さに気づかれたとのことですが、これは見せる楽しみみたいなものを感じたのですか?

 いや、見せる楽しみというか、空間を含めてどう展示するか?と考えることが面白かったですね。特に個展は一人きりなので。私やっぱり写真一枚で見せるタイプでなく、全体で流れを構成するのが好きで、自分の撮った写真を並べてリズムをつけて展示するのが楽しい、操作できるのが。だから今、商業写真の会社に所属しているのはデザインを含めて興味があるからですね。


2011.6.6「開かれた写真集会議」より

切り離すのがもったいないなって最近は思います

写真を使ってアプローチする、対象について教えて下さい。

 私は、「人の持つ間」を撮りたいっていうのがあるんです。 でも、自分が年を重ねて人を知っていくことで年々人が怖くなっていく。

  機材や撮影技術を知ると同時に、「人」を知っていくことで、大学の時なんか勝手に撮って写してしまえと思っていたけど、やっぱり被写体の気持ちも大事だしと。びびりになってきてるかな、最近。(笑)

人については何を知ったのですか?

 周りの女友達も年を重ねて来てますし、くすみとか、眼のまわりのくまとか、スッピンとか、不細工に顔を撮られたくないだろうなとか。自分も撮られたくないよな、と。周囲の人にも「あなたは、いつも撮られる人が嫌がりそうな感じのところを撮るよね」って言われて。それは褒め言葉に捉えてましたけど、そうでもないのかな、と。

 わざと嫌がるところをねらうというか、綺麗に作られた状態は好きじゃない。無防備にだらけていたり、話の合間の、考えている一瞬の顔とか、意識がどこか遠のいている顔とか、時間の隙間にはまったようなとき。あと化粧している、変化しようとしている時の顔が撮りたいんです。楽しいんです。

福井さんは他者にどんな興味があるのでしょうか?

 自分のまったく考えないようなことを、他の人が考えていたり知っていたりで、自分がいろんな未知の場所に行ける。今回の作品だと、全然知らない山梨に行くことになったり。そういう事態は、誰かと関わらないとなかなか無い。
 だから小さな事でも、他者が持っている情報や興味の対象・考えている事に、ものすごく興味があります。なにせ人と出会うというのは楽しいですね。自分を変えてくれる、自分の視野を広げてくれる。

 

自分が考えもしなかった事を他者が指摘してくれることは、スナップショットという方法に関係していますか?写真の偶然性によって自分が思いもしなかった事を知りえると。

 写真の良さって偶然性を捉える事でもあるので、確かにスナップはそうかも知れない。
でも、逆に広告など商業写真、仕事としてオーダー通りに再現する時も、またコミュニケーションがかなり必要とされる。自分がよいと思っても、他者が関わる事でまた別の角度から考えられていいものが出来る。「再現+α」としての写真は凄く興味深いし、珍しいことだなと感じますね。写真はとても変だな、と。

 物撮りの場合は再現性が結構確実で、ブレはないですし。ブレに作家性を見いだしている人も世の中にはいる一方で、1カットで何千万の宝飾品を写す媒体でもある。また、この境界が非常に曖昧で、本当にこれが果たして芸術に向くのかという疑問さえある。商業写真なんて作為的で、芸術からは程遠いなんて言われちゃいますけど。いつもそこは切り離されている気がする。

 写真と言えばアートや作家に固執しがちですが、他の製作経験からみても、写真にはすごく社会性もあり、作家性もあり、という共存が面白いので、それをやっぱり切り離すのがもったいないなって最近は思います。
 ブレストに関しては、仕事としても写真を撮っている、というメンバーだから面白いと思って参加しています。そして、面白いものができたんじゃないかなと思います。

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福井 馨   FUKUI Kaoru  

2006年 多摩美術大学映像演劇学科卒業 在学中、演劇から写真へ転向
2007/’08/’10/’11年 APAアワード 写真作品部門 入選
2010年 香港国際ポスタートリエンナーレ 銅賞
2010年 ワルシャワポスタービエンナーレ 入選

http://japankaoru.com/

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11.05 BRAINSTORMING 福井馨インタビュー

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